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多頭飼育崩壊はどのような法律トラブルに発展する?

2021年06月15日
  • その他
  • 多頭飼育崩壊
多頭飼育崩壊はどのような法律トラブルに発展する?

ペットが増えすぎ、適正な飼育ができなくなってしまう「多頭飼育崩壊」問題が増加しています。動物や飼い主が劣悪な環境で暮らしていたり、多頭飼育がきっかけで近隣とも大きなトラブルに発展したりするなど、問題は深刻化しています。

本記事では、多頭飼育に関する法的なトラブルや、近年改正された動物愛護法の罰則強化の点について、沼津オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、多頭飼育崩壊とは?

  1. (1)多頭飼育崩壊とは

    多頭飼育崩壊とは、一般的には、飼育するペットが増え続け、飼い主が、経済的又は労力的に適正に飼育できる数を超えてしまい、生育に適した飼育ができなくなる状況をいいます。多くの場合、十分な餌や水が与えられず、ふん尿が放置されるなど不衛生な環境で多数のペットが飼育されています。

  2. (2)多頭飼育崩壊が与える影響

    多頭飼育崩壊は自分が管理できる限度を超えてペットを抱え込み過ぎたことにより、飼い主の生活が破たんしてしまう状態です。そのため、飼い主自身が極めて不衛生な環境での暮らしを余儀なくされていることがあります。また、飼い主の貧困や社会における孤立した状況が背景にあることもあります。

    また、飼い主だけでなく、飼育されているペットにも病気、ストレス、飢餓等のさまざまな支障が生じます。中には、保護犬として引き取られた先が多頭飼育環境であったために、まともな食事が与えられず飢え死にしたケースもあります。

    さらに、ペットの鳴き声や悪臭、近隣へのふん尿の放置など、多頭飼育によって周辺住民の生活環境が侵害される場合も増えています。多頭飼育崩壊で近所付き合いが悪くなると、飼い主はますます孤立していきます。

    その結果、飼い主が孤独死をしていたにもかかわらず、誰もそれに気づかず、家屋が破損するような事態にまで至ってから行政によって発見されることもあります。このようにして、多頭飼育崩壊による影響は、飼い主とペットだけの問題ではなく、社会の問題として広く取り上げられるようになっているのです

2、多頭飼育崩壊がきっかけで逮捕された事例

多頭飼育崩壊は、動物の面倒を見ようという善意が発端となることも多いものです。しかし、場合によっては犯罪行為として逮捕されることもあります。実際に、多頭飼育崩壊がきっかけとなって逮捕されたケースを見ていきましょう。

● 動物保護ボランティアの女性が動物愛護法違反で逮捕されたケース
2020年11月、京都府八幡市で猫を飢え死にさせ、劣悪な環境で犬猫29匹を飼育したとして、動物保護ボランティアの54歳女性を動物愛護法違反(殺傷、虐待)容疑で逮捕されました

飼育の現場には排せつ物が約16トン、52匹の犬猫の死骸が積み上がり、劣悪な環境だったとのことです。
この女性は、病気などで引き取り手のない動物も積極的に引き取っており、動物保護業界では知られた存在だったとのことですが、飼育実態はすさまじいものだったようです。

● 動物愛護法違反で犬66匹が確保されたケース
2020年6月、兵庫県三木市の民家で数十匹の犬を劣悪な環境で飼育していた56歳の男性が、動物愛護法違反で男性が逮捕されました。警察によって66匹の犬が確認されています。木造2階建ての天井や床は抜け落ち、1、2階に数年分とみられる数トンもの排せつ物や餌の残り、毛などが堆積していたということです。

犬を保護した後も、近隣にただよう悪臭が消えず、近隣住民は家そのものの撤去を求めていますが、男性はこれに応じず、男性の逮捕後も解決には至っていないようです。

● ブリーダー女性が100匹以上を劣悪環境で多頭飼育し逮捕されたケース
劣悪な環境で85匹の犬を飼育して、虐待した疑いで、静岡県富士署と静岡県警生活保安課は2021年5月、動物愛護法違反の疑いで無職の51歳女性を逮捕しました

容疑者は2018年ごろまで保健所にブリーダー届を出して、犬の飼育・販売を行っていたようです。しかし、基準を上回る密集環境で100匹を超える犬が、ふん尿が堆積する状況で飼育されており、犬たちの多くは、歩行障害、皮膚病、感染症、衰弱、脱毛などの症状がみられたとのことです。保護された犬たちは動物愛護団体などに引き取られています。

3、多頭飼育崩壊から発生する法律トラブル

多頭飼育崩壊が起きると、近隣住民との間でさまざまな法的トラブルに発生するリスクがあります。具体的には、民法709条に規定される不法行為責任によって、損害賠償責任を問われる可能性があります

また、トラブルの原因行為をやめるように、差止請求を受ける可能性もあります。そして、不法行為責任を問われるかどうかは、侵害の程度が、一般的な受忍限度を超えているかどうかによって決まります。

つまり、騒音や悪臭を出したとしても、直ちに違法になるわけではありません。人間が生活する以上、一定の音や匂いの発生は当然のことであり、お互いさまとして受忍すべきものでしょう。

そこで、このような受忍するべき限度を超えるケース、「受忍限度」を超えた騒音や悪臭だけが、不法行為として責任を問われるのです。多頭飼育崩壊によって生じるトラブルとしては次のようなものがあります。

  1. (1)悪臭問題

    多頭飼育でまず問題となるのは悪臭問題です。悪臭の原因となるのは動物たちの排せつ物です。飼育崩壊により、自宅内に排せつ物が大量に堆積し腐敗して耐え難い悪臭が発生することがあります。

  2. (2)騒音問題

    多頭飼育の場合、しつけができずに鳴き声がやまず、夜間に犬の鳴き声や足音によって眠ることができない、朝から晩まで四六時中鳴き声がやまず、在宅の仕事にも支障が生じる、などの問題が起きます。
    悪臭や騒音が近隣住民にとって受忍限度を超えてしまうと、不法行為として損害賠償や差止めの訴訟で訴えられる可能性があります

  3. (3)動物虐待の可能性

    多頭飼育によって動物の世話が十分にできず、劣悪な環境で動物たちが放置されているとすれば、虐待にあたる可能性があります。十分な餌を与えない、極端に不潔な環境で飼育し、病気がまん延しているにもかかわらず、適切な保護を全く与えないような場合です。こうした場合は、動物虐待事案として違法行為・犯罪行為に該当する可能性があります

4、動物の虐待への罰則は強化

令和2年6月1日から改正「動物の愛護及び管理に関する法律」が施行されました。この施行の目的は、動物の虐待等に対する罰則を強化することです。

  1. (1)法改正による厳罰化

    具体的には、次のように改正されています。
    「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者」は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科せられます。それまでは2年以下の懲役または200万円以下の罰金でしたので、大幅に罰則が強化されています。

    また、「愛護動物を虐待又は遺棄した者」は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。ここにいう愛護動物とは、犬、猫、牛、馬、豚、めん羊、ヤギ、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひるを指し(野生か人が飼育しているかを問わない)、人が飼っている動物であれば、哺乳類、鳥類、爬虫(はちゅう)類のすべてが対象です。

    つまり、自分が飼っていた動物を捨てる行為は犯罪として処罰されます
    不妊手術や不妊去勢手術を行わなかったために子どもが生まれた場合も、捨てることは犯罪です。

    新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で自宅待機要請が出た際に、ペットに癒やされたいという安易な気持ちから犬猫を飼う人が増加しました。しかし、その後飼育が困難になったり自粛期間が終わったことからペットを捨てたりしてしまうというケースもあるようです。
    動物は命ある存在です。一度飼った以上、責任をもって最後まで飼育する責任があり、それを放棄することは、犯罪行為として罰せられるおそれがあることをよく覚えておきましょう

  2. (2)精神的な疾患の可能性も

    多頭飼育崩壊が増加する背景には、精神疾患との関連も指摘されています。
    動物を飼うことは一定の負担を伴うことであり、責任をもって飼育できる頭数は限られています。
    しかし、多頭飼育崩壊は、自分では十分に飼育しきれないことが明らかにもかかわらず、多数の動物を手元に集め、劣悪な環境になっても手放せないという状況であり、通常では理解しがたいことです。

    このような状態は、実は、「アニマルホーダー」と呼ばれる精神疾患の一種とされているのです。当初は、野良猫を保護した小さな善意などから始まっても、どんどん増えていく状況に全く対処せず、むしろ、さらに動物を引き受ける状態は、決して合理的でもなく、自分にも動物にも破綻をもたらす行動です。

    このような精神状態に至ると、一度解決しても再び多頭飼育を起こすリスクが高いとされています。また、高齢者が認知能力の衰えにより動物のケアができなくなり、飼育崩壊する場合もあります。

    つまり、多頭飼育は人間の精神や生活上の福祉の問題としても関連しており、親族や地域、そして行政による支援も重要なカギを握っています。
    法令が改正され、罰則が重くなったからといって、すでに多頭飼育している人が適切に動物を手放したり、十分な保護体制をすぐに整えられたりするかというと、決してそういうわけではありません。多くの場合、自分ではどうにもならなくなって、助けを求めることもできず、現状を放置、悪化させている状態の人が多いのです。

    身近に多頭飼育の問題を抱える人がいるならば、できるだけ早く、積極的に、そして、根気強く支援の手を差し伸べることが重要です。

5、まとめ

多頭飼育崩壊は、善意で始まったことが多いとはいえ、結果として動物虐待になってしまうのが現実です。そして、動物虐待は立派な犯罪であり、動物と飼い主の生活を破たんさせる重大な危機でもあります。そして、問題が大きくなると近隣住民とのトラブルも深刻化し、損害賠償や立ち退き問題など、簡単には解決できない問題が残ってしまうこともあります。多頭飼育崩壊や動物虐待でお悩みがあれば、ぜひ弁護士に相談して、早い対応をとっていくことをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスでは、動物虐待や多頭飼育崩壊問題についても弁護士が親身にご相談をうかがいます。場合によっては、警察や行政との調整も必要かもしれませんし、動物の成長は早いので、一日でも早い対応が決め手です。どうぞお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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