配偶者から離婚条件を提示された!|確認すべきことと対処法
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離婚を決意したら、どのような条件で離婚をするかを考えていかなければなりません。
自分が希望する条件で離婚できるのがベストですが、相手がいることであるため、すべてが自分の希望通りになることは期待できないでしょう。また、相手が提示してきた離婚条件が自分の希望とはかけ離れているという可能性もあります。
本コラムでは、配偶者から提示された離婚条件に納得いかない場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚を考えたら決めておくべき条件
まず、離婚をする際に取り決める必要のある条件について解説します。
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(1)親権
夫婦に未成年の子どもがいる場合には、離婚の際に父と母のどちらか一方を親権者に決めなければなりません。
親権者の指定は、離婚時に必須の条件であるため、親権者を決めなければ原則として離婚届を受理してもらうことはできません。
親権については、夫婦の事情だけでなく、自分たちの子どもにとって何がベストとなるかをよく考えてから判断するようにしましょう。 -
(2)養育費
子どもの親権を獲得して一緒に生活をする監護親は、非監護親に対して、養育費を請求することができます。
養育費について取り決めする際には、以下のような具体的な項目について判断する必要があります。- 養育費の金額
- 支払い期間
- 支払い方法
- 支払い時期
とくに、養育費の金額は、争いになりやすい項目です。
裁判所が公表している養育費算定表を利用しながら、話し合いを進めていきましょう。 -
(3)面会交流
離婚によって、非監護親と子どもは、別々に生活することになります。
しかし、子どもの健全な成長や発達にとって、両親との交流は欠かせません。
したがって、離婚後の非監護親と子どもとの面会交流についても、取り決めておきましょう。
面会交流に関しては、以下のような項目について具体的に取り決める必要があります。- 面会交流の頻度
- 面会交流の時間
- 面会交流の場所
- 面会交流の連絡方法
- 子どもの受け渡し方法
- その他(宿泊の可否、学校行事への参加の可否など)
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(4)財産分与
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を清算する制度のことをいいます。
夫婦の協力により維持・形成した財産は、「共有財産」にあたり、財産分与の対象となりますので、どちらの名義であるかを問わず、原則として、夫婦のそれぞれがその財産の2分の1を受け取ることができます。
ただし、婚姻前にためた預貯金や親から相続した遺産などは、夫婦の協力とは無関係に形成された財産であるため、「特有財産」として財産分与の対象外となります。 -
(5)慰謝料
配偶者に有責行為(不倫、DV、モラハラなど)がある場合には、有責配偶者に対して他方の配偶者から、慰謝料請求をすることができます。
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(6)年金分割
年金分割とは、婚姻期間中における夫婦の厚生年金の保険料納付記録を分割する制度のことをいいます。
離婚によって自動的に年金分割されるわけではありませんので、忘れずに手続きを行ってください。なお、離婚をした日の翌日から起算して2年以内に請求しなければなりません。
2、離婚条件が決まったらやるべきこと
離婚条件が決まった場合には、口頭での合意で済ませるのではなく、以下のような対応が必要になります。
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(1)離婚協議書の作成
離婚および離婚条件が決まったら、離婚届に必要事項を記入して、市区町村役場に提出すれば、離婚は成立します。
しかし、離婚届には親権者以外の離婚条件を記入する欄はありません。
したがって、離婚届の提出だけで終わらせてしまうと、その他の離婚条件が曖昧になり、後日にトラブルが生じるリスクが高まってしまいます。
夫婦で離婚条件を定めた場合には、口頭での合意で終わらせるのではなく、必ず離婚協議書を作成して、書面に内容を残しておくようにしましょう。 -
(2)離婚協議書は公正証書にしておくことがおすすめ
離婚条件として、養育費や慰謝料や財産分与などの金銭の支払いに関する条項が含まれている場合、特に受け取る金銭がある場合には、離婚協議書を公正証書にしておくことをおすすめします。
公正証書とは、公証役場の公証人が作成する公文書のことをいいます。
公正証書を作成する際には、公証役場に出向く手間や公証人に支払う手数料といった費用負担が発生します。
しかし、公正証書には、そのようなデメリットを上回る下記のようなメリットが存在するため、特に金銭を受け取る条項がある場合は、できる限り公正証書にしておきましょう。① 金銭支払いの約束を破った場合に強制執行ができる
離婚の際に、養育費、慰謝料、財産分与の取り決めをしたとしても、さまざまな理由から相手が支払いを怠るケースがあります。
離婚時に取り決めをしていたとしても、通常の離婚協議書では、相手の財産を差し押さえるためには、裁判(調停・審判)をして債務名義を獲得してからでなければ強制執行をすることができません。
しかし、強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておけば、相手が約束を破った場合には裁判をすることなくいきなり強制執行を申し立てて、相手の財産を差し押さえることができます。
② 証明力が高い
公正証書は、専門家である公証人が作成する文書であるため、当事者だけで作成する離婚協議書に比べて、証明力が高い文書となります。
もし、離婚条件について揉めることがあったとしても、公正証書があれば記載通りの効力が認められる可能性が高いでしょう。
③ 紛失・偽造のリスクがない
公正証書の原本は、公証役場で保管されています。
そのため、当事者が離婚協議書をなくしてしまうリスクや偽造されてしまうリスクもありません。
写しを紛失した場合には、公証役場で再取得することも可能です。
3、提示された離婚条件に合意できないときの対処法
相手から提示された離婚条件に納得ができない場合には、以下のような方法で対処しましょう。
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(1)話し合い
相手から提示された離婚条件に納得ができない場合には、自分が希望する離婚条件を伝えて、すり合わせを行っていきましょう。
離婚条件の話し合いでは、お互いに譲歩できる部分は譲歩することも大切です。ささいな条件にこだわるのではなく、柔軟な姿勢を示していきましょう。
離婚条件のなかでも譲歩できない部分と譲歩してもいい部分について、自分のなかで優先順位を明確にしてから話し合いをすることで、交渉を進めやすくなります。 -
(2)離婚調停
夫婦間の話し合いでは合意が成立しない場合には、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)の申し立てを行いましょう。
調停では、調停委員が夫婦の間に入ってくれるため、当事者だけで話し合いをするよりもスムーズに話し合いを進めることができる可能性が高くなります。
また、相手が相場からかけ離れた金額や非常識な条件などを提示してきているような場合には、調停委員が客観的・中立的な立場から適切な条件を提示して、相手を説得してくれます。 -
(3)離婚裁判
離婚調停でも決着がつかない場合には、最終的に離婚裁判によって解決を図りましょう。
離婚裁判では、離婚の可否や離婚条件を裁判官が判断してくれますので、当事者の話し合いでは解決できない問題でも必ず結論を出すことができます。
ただし、裁判所に離婚を認めてもらうためには、以下のような法定離婚事由が必要となります。- 配偶者に不貞行為があった
- 配偶者から悪意で遺棄を受けた
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
これらの法定離婚事由がなければ、裁判離婚をすることはできない点に注意してください。ただし、法定離婚事由がない場合でも、和解による離婚が成立する場合はあります。
4、離婚問題を弁護士に相談するメリット
離婚問題でお悩みの方は、弁護士に相談してください。
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(1)適切な離婚条件をアドバイスしてもらえる
離婚時には、親権、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割、面会交流などの条件を決めなければなりません。
それぞれの離婚条件の内容、項目、相場などは法的知識や経験がなければ適切に判断することができません。
相手から提示された離婚条件が適切な内容であるかを判断することができず、不利な条件で離婚に応じてしまうリスクもあります。
話し合いの段階から弁護士に相談をしてアドバイスを受けることで、不利な条件で離婚に応じる事態を回避することができます。 -
(2)相手との交渉を任せることができる
弁護士から適切な離婚条件についてのアドバイスを受けたとしても、自分だけでは、相手を説得してこちらが提示した離婚条件に応じてもらうことが難しいこともあります。また、直接の話し合いの際には、感情的になってしまい冷静になることができない場合も多いでしょう。
ひとりで交渉することに不安を感じている方は、弁護士に依頼をすれば、交渉を代行させることができます。
弁護士が交渉を担当することで、有利な条件で離婚できる可能性が高くなるほか、相手との交渉に伴う精神的な負担やストレスからも解放されるでしょう。
5、まとめ
相手が提示した離婚条件に納得できない場合には、話し合いや調停を行ったり、裁判で争ったりすることで、希望する条件での離婚を成立させられる可能性があります。
しかし、調停や裁判といった法的手続きは、一般の方には適切に進めていくことが難しい場合もあるため、まずは弁護士に相談してサポートを受けましょう。
離婚問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています