「嫁の不機嫌に限界…」妻との離婚を考える男性が知っておくべきこと
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「家に帰るといつも不機嫌な嫁がいる」という状況に悩まされており、精神的にも休まらず、結婚生活に限界を感じる方もいるでしょう。妻との話し合いにより関係が改善できればよいでしょうが、それも難しい場合には離婚も選択肢のひとつになります。
妻が不機嫌であるというだけでは裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」にはなりませんが、夫婦間の話し合いで離婚について合意できた場合や、不機嫌である以外にも法定離婚事由に当てはまる行動を妻がしていた場合には離婚をすることができます。
本コラムでは、不機嫌な妻との離婚を考える男性が知っておくべきことについて、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。
1、「嫁の不機嫌」に限界を迎えてしまう理由
まず、妻がいつも不機嫌な場合に、夫に生じる苦痛や不利益を具体的に解説します。
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(1)不機嫌になる頻度が多くて気が休まらない
仕事で疲れて家に帰るといつも不機嫌な妻がいる状況では、家に帰ることも苦痛に感じてしまうでしょう。
仕事もあるのに家庭でも精神的に休まらずに疲弊していると、「いつまで続くのだろう」、「この先もずっとこうなのだろうか」と先が見えず、愛情も薄れて限界を迎えてしまうこともあります。 -
(2)不機嫌になっている理由がわからず極端に気をつかう
妻が不機嫌な理由がわかれば対策も可能ですが、なぜ不機嫌になっているのかがわからなければ、どうすることもできません。
結婚した夫婦であっても元々は他人である以上は、「相手が何を考えているか」「何が気に入らないのか」などをすべて把握することは不可能です。
理由がわからないままだとこれ以上刺激しないように気をつかって生活しなければなりませんので、本来安らげるはずの家庭で疲弊してしまうことになります。 -
(3)不機嫌な妻に謝罪をしても許してもらえない
自分が原因で妻が不機嫌になっているときは、謝罪をすることで機嫌を直してもらえる可能性もあるでしょう。
しかし、場合によっては謝罪をしたとしても許してくれず、ずっと不機嫌なままということもいます。
謝罪をしても無視されてしまうと、夫としても嫌な理不尽に感じて、精神的にもストレスを感じることになります。 -
(4)いつまた不機嫌になるかわからず不安におびえる
不機嫌になる理由やタイミングがわからないと、常に妻におびえながら生活をしていくことになってします。
このような生活が続くと、精神的に休まるタイミングもなくなってしまい、「このまま結婚生活を続ける意味はあるのだろうか」と考えてしまうこともあるでしょう。
2、「嫁の不機嫌」を理由に離婚することはできる?
以下では、妻が不機嫌であることを理由に離婚することができるかどうかを解説します。
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(1)協議離婚ならどんな理由でも離婚できる
妻と離婚をする場合には、まずは離婚に向けた話し合いを行います。
妻が離婚に応じてくれるのであれば、どんな理由でも離婚することができるため、「嫁の不機嫌」が離婚理由であっても離婚は可能です。
ただし、いつも不機嫌な妻に「君の不機嫌が理由で離婚をしたい」と伝えても、感情的になってしまい話し合いにならない可能性が高いでしょう。
そのため、妻への伝え方については配慮が必要になります。 -
(2)協議離婚に応じてくれないときは離婚調停の申し立て
妻と話し合っても離婚の合意に至らないときは、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。
離婚調停では調停委員という第三者を介して話し合いを行うため、夫婦が顔を合わせて話し合いをする必要がなく、協議離婚よりもスムーズに話し合いを進めることができます。
また、離婚調停は協議離婚と同じくあくまで夫婦間の話し合いであるため、合意が成立するなら、どんな理由でも離婚することが可能です。 -
(3)離婚裁判では法定離婚事由が必要
離婚調停を経てもなお離婚が成立しない場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することを検討しましょう。
離婚裁判においては、以下の法定離婚事由が存在するなら、配偶者が離婚を拒んでも、裁判所の判断で離婚することができます。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
「嫁が不機嫌」という理由のみでは、上記法定離婚事由のいずれにも該当しないため、この理由だけでは裁判で離婚するのは難しいといえます。
したがって、裁判離婚まで考えている場合には、妻の不貞行為、妻からのDV・モラハラ、長期間の別居など、法定離婚事由に該当する事情があるかどうかを確認することが必要になるのです。
3、妻との離婚に向けて進めておくべき準備
妻との離婚を検討されている場合には、事前から、以下のような点について準備を進めておきましょう。
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(1)財産分与の対象財産を把握
夫が働いていて、妻が専業主婦という家庭では夫名義の財産が夫婦全体の財産の大部分を占める場合が多いです。
離婚時には財産分与により夫婦の共有財産の清算が認められていますので、妻から財産分与の請求がなされた場合には、夫名義の財産を妻に分けなければならないことが多いです。
多くの夫婦では、夫は妻に対して財産分与により財産を渡す側の立場になるでしょう。
したがって、今後の生活や将来の計画のために、どのくらいの財産が財産分与の対象になるのかをあらかじめ把握しておくことが大切です。 -
(2)婚姻費用の金額を算定
平均的にみると、夫は妻よりも収入が多いものです。
そのため、婚姻費用の支払いの場面では、男性側が支払うことが多いです。
婚姻費用の金額によっては、別居後の経済状況が大きく変わりますので、別居後の生活設計のためにも婚姻費用の金額相場はしっかりと把握しておく必要があります。
婚姻費用の金額は夫婦の話し合いで決めることになりますが、裁判所が公表している婚姻費用算定表を利用すれば、相場となる金額をすぐに把握することができます。 -
(3)慰謝料請求する場合には証拠の確保
妻に不貞行為、DV、モラハラなどの有責事由がある場合には、離婚時に妻に対して、慰謝料の請求をすることができます。
しかし、妻がこれらの有責事由を素直に認めてくれず、有責事由を否定して慰謝料の支払いを拒む可能性も高いのです。
慰謝料の請求を検討されている方は、妻が慰謝料の支払いを拒んだ場合に備えて、有責事由を立証するための証拠を確保しておきましょう。
離婚を切り出した後では、妻に隠されるなどして証拠を確保するのが難しくなるため、離婚を切り出す前に十分な証拠を収集しておくことが大切です。
4、男性だからこそ知っておきたい親権の問題
男性が離婚する場合には、親権に関する問題についてもしっかりと理解しておくことが大切です。
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(1)親権者を指定する際の判断要素
子どもがいる夫婦では、離婚時にどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。
一般的に、父親と母親を比べると母親の方が親権の獲得に有利であるため、離婚により男性側は親権を失う可能性は高いといえます。
もっとも、男性だから絶対に親権を獲得することができないというわけではありません。
親権の獲得を希望する場合には、裁判所が親権者を判断する際の考慮要素を理解しておきましょう。
具体的には、以下のような要素が考慮されます。- ① 監護の継続性
監護の継続性とは、「子どもが監護親のもとで安定した生活を送っている場合には、現状を尊重するべき」という基準です。
「離婚により子どもは精神的にも大きなストレスを受けることになるので、その影響を最小限に抑えるべきだ」という考えに基づいています。
「離婚前に別居をする際には子どもを連れて出た方が有利だ」といわれるのは、このような基準によるものです。
ただし、相手側に無断で子どもを連れ去ったような場合には、監護の継続性は重視されない場合がある点に注意してください。 - ② 母性優先の原則
母性優先の原則とは、子どもが幼いときは情緒的成熟のために母性的な立場にある親が優先されるという基準です。
乳幼児などでは母親による授乳などが不可欠になりますので、その時期に離婚する場合には、父親が親権を獲得するのは難しくなります。
ただし、育児や子育てに積極的に参加している男性であれば、「母性的な立場にある」と評価されて、親権を獲得できる可能性もあります。 - ③ 兄弟不分離の原則
兄弟不分離の原則とは「子どもに兄弟姉妹がいる場合には兄弟姉妹を分離すべきではない」という基準です。
兄弟姉妹は、精神的・情緒的なつながりが強いため、兄弟姉妹を分離してしまうと精神面に大きな影響が及ぶおそれがあります。
そのため、子どもが複数いるときは、子どもごとに親権者を判断するのではなく、まとめて判断される傾向があるのです。
ただし、子ども年齢が上がるにつれて、兄弟不分離の原則は重視されなくなります。
そのため、子どもの年齢によっては、兄弟を分離して親権者を指定できる可能性も高くなります。 - ④ 子の意思の尊重
親権者が父親と母親のどちらになるかは、子どもにとっても重要な関心事であるため、子どもの意思も尊重して親権者が判断されます。
ただし、子どもの意思だけで親権者を指定することはありませんので、あくまでも考慮要素のひとつであることに注意してください。
- ① 監護の継続性
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(2)親権の獲得が難しいときは面会交流を充実させる
男性側が親権を獲得するのが難しいケースでは、面会交流を充実させることにより、離婚後も子どもと定期的かつ継続的な交流を持つことが可能になります。
親権を獲得するのが難しいという場合には、親権獲得に固執するのではなく、面会交流の充実化に切り替えて話し合いを進めていくことを検討してください。
なお、離婚後に面会交流が希望どおりに実施されないおそれがある場合には、日時、場所、頻度、受け渡し方法、連絡方法など面会交流の方法をできる限り具体的に定めておく必要があります。
5、まとめ
「嫁が不機嫌」という理由だけでは裁判所に離婚を認めてもらうことは難しいため、法定離婚事由に該当するような事情がない場合には、協議離婚または調停離婚による離婚を目指していくことになります。
男性側が離婚する場合には、財産分与や親権などについて不利になる可能性が高いため、事前から慎重に検討して準備を進めておく必要があります。
少しでも有利に離婚手続きを進めるためにも、できるだけ早い段階から、弁護士に相談してください。
ベリーベスト法律事務所では男性からの離婚に関するご相談も承っています。
妻との離婚を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています