離婚問題において内容証明郵便を利用するメリットや効力とは?
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沼津市が公表している令和5年版の統計書によると、沼津市では令和4年に465組の夫婦の離婚が成立しました。
不倫の慰謝料請求や金銭債務の支払い督促のためには、内容証明郵便が利用されることがよくあります。内容証明郵便とは、郵送物の内容や送付記録を保証するサービスです。
離婚問題で内容証明郵便を利用するメリットや、その効力について、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。


1、そもそも内容証明郵便とは?
「内容証明郵便」とは、発送日や発送場所、文書の内容や、差出人・受取人が誰なのかを郵便局が証明するサービスです。
郵便局窓口のほか、「e内容証明」というインターネットサービスを利用することで、24時間いつでも内容証明郵便を発送することができます。
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(1)内容証明郵便が利用されるケースと効果
離婚問題に限らず、内容証明郵便が利用される主なケースは以下の通りです。
- 契約の解除を通知する場合
- 紛争相手に自分の意見を伝える場合
- 金銭債務の未払い分を請求する場合
- 損害賠償請求をする場合
内容証明郵便は、裁判での証拠として活用できるほか、相手に心理的プレッシャーを与えることで、金銭債務の支払いが滞った場合などに支払ってもらいやすくなるといった効果がありますが(3章で詳しく解説)、強制力はありません。
そのため、たとえば養育費の支払いが滞っている場合、内容証明郵便で支払うように求めることはできても、強制的にお金を差し押さえることはできないのです。 -
(2)配達証明との違い
内容証明郵便の他にも、日本郵便では「配達証明」というサービスも行われています。配達証明は一般書留に付けられるオプションで、配達したという事実のみを日本郵便が証明してくれるサービスです。
手軽に利用できる配達証明ですが、配達したことのみを証明するサービスであり、内容証明郵便とは異なる点に注意が必要です。
内容や受取人は誰かなどについても証明したい場合は「内容証明郵便」を利用しましょう。
2、離婚問題において内容証明郵便を利用するケース
離婚問題において内容証明郵便を利用するのは、「離婚の話し合いが進まない」、「相手と直接話したくない」、「請求内容を残しておきたい」といった場合です。
具体的な4つのケースをみていきます。
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(1)慰謝料請求
離婚理由が相手の不貞行為(不倫)やDVだった場合、不法行為によって精神的苦痛を受けたことに対する損害賠償請求として「慰謝料請求」をすることが可能です。
特に、不貞行為の場合は配偶者だけではなく、その不倫相手にも慰謝料を請求することができるため、不倫相手への慰謝料請求をする際に内容証明郵便がよく利用されます。不倫相手と直接顔を合わせたくないケースや、不倫相手に電話などの連絡を無視されるケースでも、相手の名前や住所がわかれば内容証明郵便を送って本気度を伝えることができるからです。 -
(2)離婚条件の要求
離婚する場合には離婚条件をまとめる必要があります。取り決めるべき具体的な離婚条件は以下の通りです。
- 離婚するか否か
- 親権をどちらがとるか
- 面会交流の頻度や方法
- 養育費の金額や支払い方法
- 財産分与の内容
- 年金分割の割合
- 慰謝料の金額
これらの離婚条件をまとめるためには、相手に自分の要求する離婚条件を明確に伝え、「期限内に回答がない場合は調停を起こす」といった意思をはっきりと伝えることが大切になります。
内容証明郵便で離婚条件の提示をすることで相手に本気度も伝わり、離婚協議がスムーズに進む可能性もあるでしょう。 -
(3)養育費や財産分与などの請求
たとえば、協議離婚時に離婚協議書や公正証書で養育費や財産分与について取り決めをしていたにもかかわらず支払われないような場合に、内容証明郵便が利用されます。
内容証明郵便であれば、養育費や財産分与を請求するだけでなく、「支払われなければ裁判を起こす」あるいは「強制執行手続きを行う」という本気度を相手に伝えることもできるのです。 -
(4)離婚に向けた協議の申し入れ
離婚協議をしたいものの、相手が話し合いに応じない場合などに内容証明郵便を利用して「応じなければ調停を起こす」という意思も伝えることで、相手に本気度が伝わり、離婚協議に応じてもらえる可能性が高まるでしょう。
3、離婚問題で内容証明郵便を送付するメリット
離婚問題で内容証明郵便を送付する3つのメリットについて説明していきます。
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(1)慰謝料などが支払われる可能性が高まる
内容証明郵便で「期限内に支払わなければ訴訟・調停を起こす」という意思を伝えておけば、こちらの本気度や事態の重大性が相手方に伝わって心理的プレッシャーになり、相手方が自発的に支払ってくれる可能性が高まります。
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(2)請求事実が明確に残る
離婚条件や養育費の未払い分などについて口頭で請求した場合、「そんな請求されたことがない」と相手に否定されてしまっても、証拠がない以上、反論することができません。
その点、内容証明郵便であれば文書の内容やそれが送付された事実及び相手方がこれを受け取った事実を郵便局が証明してくれるため、相手との「言った、言っていない」といった水掛け論を防ぐことができるのです。 -
(3)消滅時効の完成を猶予できる
離婚慰謝料や養育費などの請求権は、一定期間が過ぎると消滅時効を迎えて失われるため、請求できなくなってしまいます。慰謝料は原則離婚時から3年、養育費は原則権利を行使できると知った時から5年で請求権が消滅してしまうのです。
養育費の請求時効が完成しそうな場合は「債務承認」や「裁判での請求」、「仮差し押さえ、差し押さえ」といった方法で時効を更新(リセット)することができますが、時効の完成まで時間があまりない場合、これらの方法では準備している間に時効が完成してしまうことがあります。
そこで、リセットまではいかないものの、消滅時効の完成を猶予できる方法として利用されるのが、内容証明郵便による「催告」です。「催告」とは内容証明郵便を送付して請求の意思表示をすることで、時効の完成まで時間があまりない場合に催告をすることで、時効の完成を6か月遅らせること(完成猶予)ができます。
お問い合わせください。
4、内容証明郵便を利用する際の注意点
他方、内容証明郵便を送付する際には、以下の点にご注意ください。
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(1)手間・費用がかかる
普通郵便と比べて、費用が掛かることに気を付けた方が良いと思います。
具体的に、郵便局窓口で内容証明郵便を送付する場合の費用は次のとおりです。- 内容証明料:文書1枚あたり480円(2枚目以降は1枚あたり290円増)
- 一般書留料:480円
- 通常郵便料金:50gまでの定形郵便の場合、110円など
- 配達証明料:配達証明を付ける場合は350円
電子内容証明を利用する場合の費用は次のとおりです。
- 電子内容証明料金:文書1枚あたり382円(2枚目以降は1枚あたり360円増)
- 謄本送付料金:304円(一括送付の場合は503円)
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(2)法的拘束力なし
内容証明郵便そのものについては、時効の完成猶予を行う法的効果はある物の、損記載内容自体に法的拘束力はないことにご注意下さい。
5、離婚問題でお悩みなら弁護士に相談を
離婚問題でお悩みの際には弁護士にご相談ください。
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(1)養育費や財産分与、慰謝料なども相談できる
弁護士に依頼すれば、内容証明郵便の作成を任せることができます。内容証明郵便はご自身で行うこともできますが、弁護士名義で行うことで相手により一層プレッシャーを与えることが可能です。
また、弁護士に相談することで養育費や財産分与、慰謝料などの適正な金額や条件についてのアドバイスを受けられることに加えて、弁護士が代理人になることで離婚条件などの交渉の際に依頼人に有利な条件になるように進めていくことが期待できます。ここで協議離婚が成立させることができれば、調停や裁判に進む前に解決できるのです。
さらに、離婚後のトラブル防止にも役立つ公正証書の作成や、離婚協議が決裂して離婚調停、離婚裁判に発展した場合の裁判手続きも弁護士に一任することができます。 -
(2)時効を考慮した手続きが可能
前述の通り、慰謝料請求や養育費請求には時効もあるため、どのように対応すればいいのか困っている間や準備に手間取っている間に時効を迎え、請求自体できなくなってしまうケースもあるため、早めに行動を起こすことが大切です。
しかし何もかも自分でやろうとすると、たとえば交渉時に相手に有利な条件で取り決めてしまったり、知らない間に時効が成立してしまっていたりといったことも起こりえるでしょう。
弁護士に相談することで、適正かつスピーディーに手続きを進めることができます。早期解決のためにも、なるべく早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
6、まとめ
内容証明郵便は離婚条件の提示や離婚に向けた協議の申し入れなど、離婚問題のさまざまな場面で活用することができます。
内容証明郵便を利用することで、慰謝料などを支払ってもらえる可能性が高まるほか、請求事実を明確に残すことが可能です。また、慰謝料や養育費などの請求権の時効の完成を猶予することもできるため、時効完成まで猶予がない場合は、内容証明郵便を積極的に利用することをおすすめします。
内容証明郵便などでお困りの際は、離婚問題の解決実績があるベリーベスト法律事務所 沼津オフィスへ、まずはお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています