後遺障害等級が非該当になったら示談金はどうなる? 認定条件と対応方法を解説
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令和3年に静岡県沼津市で発生した交通事故は1131件で、死者は2名、負傷者は1410名でした。
交通事故のケガが完治せずに後遺症が残った場合、加害者側の自賠責保険会社を通じて「後遺障害等級」の認定を申請しましょう(加害者側の任意保険会社に手続きを任せることもできます)。
ただし、後遺障害等級が必ず認定されるとは限らず、審査の末に「非該当(=後遺障害なし)」と認定されてしまうこともあります。もし後遺障害等級が非該当になったことに納得できない場合には、弁護士にご相談ください。
本コラムでは、後遺障害等級が非該当となるケースの例、非該当となった場合の示談金の取り扱い、後遺障害等級の認定結果に納得できない場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。
1、後遺障害等級非該当となるケースの例
後遺障害等級の認定手続きでは、症状の部位につき、症状の程度が後遺障害等級表に定められる等級に該当するか否かについて、認定基準に沿って審査が行われます。
審査にあたって重要なポイントとなるのが、「後遺症の具体的な症状に関する、医学的所見」と、「後遺症と交通事故の間の因果関係」です。
この二点について以下のような問題がある場合には、後遺障害等級が非該当とされてしまう可能性が高くなります。
- 客観的な医学的所見が得られない
- 交通事故との因果関係が不明
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(1)客観的な医学的所見が得られない
後遺症の具体的な症状について、医師の診断による客観的な医学的所見が得られない場合、には、症状に対応する後遺障害等級が認定される可能性は低くなります。
とくに、自覚症状はあるにもかかわらず、画像検査(レントゲン・MRI・CTスキャンなど)においてはその原因が現れていないケースについては注意しなければなりません。実際にその症状が発現していることを客観的に立証できず、後遺障害等級が非該当となってしまう可能性があるためです。
ただし、画像所見などの客観的資料が得られたといえない場合であっても、医師が作成する後遺障害診断書の内容によっては、後遺障害等級が認定される可能性があります。
たとえば14級9号の「局部に神経症状を残すもの」は、画像所見が得られない場合であっても、交通事故との因果関係を医学的に説明できる場合には認定される可能性があるのです。 -
(2)交通事故との因果関係が認められない
後遺症と交通事故の間の因果関係が認められなければ、後遺障害等級は非該当となります。
因果関係が否定されるケースの代表例は、交通事故とは別の原因によって後遺症が発生したと判断される場合です。
たとえば腰痛について、交通事故が原因で発生したことを主張して後遺障害等級認定を申請したとします。
この場合、もし被害者が腰に強い負担がかかる労働に従事していると、「交通事故ではなく、その労働が原因で腰痛を生じたのではないか」と疑われる可能性があります。
交通事故以外の原因によって後遺症が生じた可能性がある場合、それを否定する十分な資料を提出できなければ、後遺障害等級非該当となってしまう可能性が高いのです。
2、後遺障害等級非該当となった場合、慰謝料は受け取れないのか?
後遺障害等級非該当となった場合でも、加害者側から示談金(損害賠償)を一切受け取れないわけではありません。
請求可能な損害賠償項目については、適切に請求するようにしましょう。
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(1)後遺障害慰謝料は受け取れない|ただし不服申立ての余地あり
後遺障害等級が認定されれば、加害者側に対して、後遺症によって受けた精神的損害を補塡(ほてん)する「後遺障害慰謝料」を請求できます。
また、後遺症があれば労働能力が低下し、そのために将来の収入の減少(逸失利益)が生じる可能性があるといえますが、後遺障害等級が認定されれば、等級に応じた割合の「逸失利益」を請求することもできます。
これに対して、後遺障害等級非該当となった場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することが難しくなります。
ただし、後述する方法により、後遺障害等級の認定結果について異議申立てを行うことはできます。 -
(2)入通院慰謝料は受け取れる
後遺障害等級非該当となった場合でも、入院・通院を強いられたことにより受けた精神的損害を補填する「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」は請求できます。
入通院慰謝料の金額は、入院期間と通院期間に応じて決まります。
医師の指示に従って入院や通院を行ったうえで、弁護士のサポートを受けながら、適正額の入通院慰謝料を請求しましょう。 -
(3)慰謝料以外にも賠償を請求できる損害がある
慰謝料以外にも、交通事故の被害者は、加害者に対してさまざまな項目の損害賠償を請求できます。
- 治療費
- 通院交通費
- 入院雑費
- 付き添い費用
- 休業損害
- 装具(器具)購入費
後遺障害等級非該当であっても、これらの損害が生じた場合については、加害者側に対して賠償を請求することができます。
損害項目と金額をリスト化したうえで、請求可能な項目については適切に損害賠償を請求しましょう。
3、後遺障害等級非該当に納得できない場合にできること
後遺障害等級非該当となったことについて納得できない場合は、以下の方法によって不服申立てを行うことができます。
- 自賠責保険会社に対する異議申立て
- 自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理制度
- 損害賠償請求訴訟の提起
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(1)自賠責保険会社に対する異議申立て
後遺障害等級認定の結果について不服がある被害者は、加害者側の自賠責保険会社に対して異議申立てを行うことができます(異議申立ても、相手方の任意保険会社に手続きを任せることもできます)。
異議申立てを行う際には、以下の事項を記載した異議申立書を、加害者側の自賠責保険会社に提出してください(相手方の任意保険会社に手続きを任せる場合は、相手方任意保険会社に提出します)。① 異議申立ての趣旨
認定されるべき後遺障害等級を記載します。
② 異議申立ての理由
なぜその後遺障害等級が認定されるべきであるかを記載します。
とくに異議申立ての理由については、後遺障害等級の認定要件をふまえて、元々の認定を覆すのに十分な内容を説得的に記載し、それを裏付けるのに必要な資料を提出しなければなりません。
異議申立書の具体的な内容については、専門知識を持たない個人が適切に記載することは難しいため、弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理制度
後遺障害等級認定に対して不服な場合、自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理を申請することもできます。
自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理制度では、弁護士・医師・学識経験者で構成された紛争処理委員会が後遺障害等級認定の事後審査を行います。
原則として無料で利用可能であり、有識者の見識を活用した客観的で中立的な審査を期待できる点がメリットです。
ただし自賠責保険会社に対して異議申立てをする場合と同様に、すでに認定された後遺障害等級を覆すに足る事情を説得的に主張し、それを裏付ける資料を提出する必要があります。
提出書類や記載内容については、専門家である弁護士に相談してください。 -
(3)損害賠償請求訴訟の提起
後遺障害等級認定に納得できない場合の最終手段が、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することです。
交通事故の損害賠償請求訴訟では、被害者が原告、加害者(及び任意保険会社)を被告として、損害賠償責任の有無および金額を争います。
後遺症については、具体的な症状の内容や交通事故との因果関係などを、被害者側が証拠に基づいて立証しなければなりません。
加害者側の反論に対しても、再反論を準備する必要があります。
訴訟は専門的かつ複雑な手続きとなるため、個人で対応するのは難しいといえます。
訴訟の提起を検討される場合には、まずは専門家である弁護士に相談してください。
4、弁護士に依頼すれば損害賠償金が増額となるケースも
後遺障害等級認定の申請や異議申立てなど、交通事故の損害賠償請求に関する対応は、弁護士に依頼することをおすすめします。
交通事故の示談交渉を行う際、加害者側から提示される示談金額は、被害者に生じた実際の損害額に比べると十分なものではないことがほとんどです。
弁護士を通じて示談交渉を行えば、客観的な損害額の算定基準に基づく請求を行うことにより、より高額な損害賠償金を請求することができる場合がほとんどです。
後遺障害等級の認定結果についても、納得できない場合は弁護士へご相談ください。
弁護士は、現在の症状や治療の経過などをふまえて、認定基準を正しくふまえた説得的な主張を行い、後遺障害等級の認定を覆せるように尽力します。
とくに後遺障害等級が非該当となったことについて納得できない方は、お早めに、弁護士に連絡してください。
5、まとめ
後遺症と思われる症状が残っている場合でも、客観的な医学的所見が得られない場合や、交通事故との因果関係が不明な場合などには、後遺障害等級が非該当となってしまう可能性があります。
ただし、後遺障害等級の認定結果に対しては異議申立てを行うことができます。
また、後遺障害等級が非該当であった場合でも、請求すべき損害賠償の項目があります。
ベリーベスト法律事務所では、交通事故の後遺障害等級認定や異議申立て、損害賠償請求などに関するご相談を受け付けております。
交通事故の被害に遭われた方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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