子どもが補導された! 補導と逮捕との違いや家族ができることとは?
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ある日突然、「お子さんを補導しました」と警察から連絡があると、誰でも動揺してしまうことでしょう。
さて、補導という言葉を聞いたことはあるけれど、具体的にどのようなことを指しているのか、補導されるとどうなるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、補導と逮捕の違いや補導された後にどうなるのか、前科が付くのか、といった疑問についてベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。
1、補導と逮捕の違い
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(1)補導とは
補導とは、少年の非行を防止するために警察が行う活動の総称です。逮捕とは異なり、補導自体は、法律による定めはなく、警察が独自に定める手法です。
具体的には、少年が非行に走らないように、警察官や補導員が未成年者の言動に注意をしたり、問題行動を発見した際に親や学校に連絡をしたりします。
補導には、「街頭補導」と「継続補導」の2種類があります。
「街頭補導」とは、その名のとおり、街中や駅など人が集まり、一般的に犯罪が起こりやすい場所を警官が見回り、問題を発見した際にその場で行う補導です。
「継続補導」とは、犯罪や非行を未然に防ぐことを目的に、特定の少年を対象として継続的に指導を行うものです。
街頭補導の対象となるのは、非行少年と不良行為少年です。
それぞれについて意味を確認しておきます。
非行少年
非行少年とは、少年法において以下の3つに分類されます。- 罪を犯した少年
- 刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の者
- 性格や環境に照らして将来罪を犯すまたは刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年
不良少年
不良行為少年とは次の17の行為をする少年を指します。- 飲酒
- 喫煙
- 薬物乱用
- 粗暴行為
- 刃物等所持
- 金品不正要求
- 金品持ち出し
- 性的いたずら
- 暴走行為
- 家出
- 無断外泊
- 深夜はいかい
- 怠学
- 不健全性的行為
- 不良交友
- 不健全娯楽
- その他(上記の行為以外の非行その他健全育成上支障が生じるおそれのある行為で、警視総監または都道府県警察本部長が指定するもの)
非行少年、または、不良行為少年として警察が保護者に連絡をすると、警察に補導記録が残ります。
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(2)逮捕とは
逮捕とは、犯罪の疑いがある場合に、警察に短時間身柄を拘束されることを指します。
逮捕の後は取り調べが始まることが多いですが、その間に、さらに身柄を拘束する必要があると判断されれば、勾留や観護措置などに進むことがあります。
起訴前の勾留は、原則10日間が上限です。しかし、さらに捜査の必要があれば最大で10日間延長が可能です。
逮捕後は、家族でさえ連絡が取れなくなってしまいます。ただし、逮捕された人には弁護人を選任する権利があります。家族が逮捕されたら一刻も早く弁護士に相談しましょう。
お問い合わせください。
2、補導歴と非行歴
補導歴とは、犯罪以外の理由で警察に補導された経歴をいいます。補導歴は、少年事件の審判や、警察が対処を決める際の参考資料となります。
ただ、補導歴は成人すると破棄されますので履歴として残るものではありません。前科前歴にも該当しません。成人になる際にリセットされると考えていいでしょう。
一方、非行歴とは、非行少年として補導または検挙された履歴のことです。非行歴は、補導歴と違って成人しても破棄されません。前歴として残ることになります。
お子さんが補導された場合は、補導歴になるのか、非行歴になるのか、弁護士などに確認するほうがよいでしょう。
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3、少年が逮捕されたらどうなる?
少年が逮捕されると、まずは、警察で取り調べを受けることが多いです。その際に、警察署や拘置所に拘束されることになります。
この期間は、自由に外部と連絡することはできません。もちろん、外出もできないので学校に行くこともできません。
取り調べは、警察と検察官によって行われます。その後、事件は家庭裁判所に送られます。
少年の住居が不定である、罪証隠滅や逃亡のおそれがある、緊急保護の必要性などがあるという場合には、少年鑑別所に移し、心身の鑑別を行う観護措置がとられます。
観護措置期間は原則として2週間ですが、実際は、更新により最大4週間の監護が続きます。さらに、2回を限度として観護措置を更新することが可能ですので、最長で合計8週間にわたって鑑別所での生活が続く可能性があります。
なお、少年が犯した犯罪が、死刑や懲役または禁錮に該当する重大な事件であった場合、家庭裁判所から検察官に改めて送致される可能性があります。これを「逆送」といいます。
逆送されると、成人と同様に刑事裁判で処罰が決定されます。逆送されない場合は、家庭裁判所の少年審判で処遇を決定します。
処遇内容としては、都道府県または児童相談所長への送致(ただし18歳未満の場合に限る)、保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設への送致、もっとも重い処遇としての少年院送致、などがあります。
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4、補導について弁護士ができること
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(1)補導の理由を把握する
弁護士に相談すると、弁護士は、まずご相談者の話をじっくりうかがいます。
補導される理由はさまざまで、成人の刑事事件に比べて、学校や地域、家族などのさまざまな事情や経緯が複雑に関係していることが多いのが少年事件の特徴です。また、少年は、集団の影響を受けやすく、補導されるきっかけも、単独行動ではなく、グループでの行動によること可能性が高いといえます。
弁護士であれば、具体的にどのような背景が重要なのかを判断し、法的な観点から、グループ行動が補導に結びついた流れを把握することができます。補導にまつわる前後の事情を把握することは、今後の見通しを立てるための第一歩です。
弁護士に事情を話すことで、ご家族も本人も、補導に至った経緯を整理し、事情を受け入れ、見通しなどを立てていくことができるようになります。 -
(2)逮捕などの処分の可能性を判断する
補導に至った事情や経緯が明らかになれば、今後の法的な流れについて弁護士の見解を聞くことができます。
少年事件は、成人に比べれば手続きが複雑で、警察だけでなく、学校や家庭裁判所が関係する場合もあります。場合によっては、補導されたあとに、逮捕されたり、裁判にかけられたりする可能性もあり得ます。
しかし、補導された段階で、家族や本人が、その後の見込みや処分の可能性を客観的に判断することは非常に困難です。今後の流れに見通しが立たない状態は、精神的にも非常に負担となります。逆に、現状をしっかり受け入れて、見通しが立てられれば、今やるべきことを選択できるようになります。 -
(3)環境調整の方法を指南する
少年の補導事件の場合は、「環境調整」が大きな意味を持ちます。「環境調整」とは、問題を起こした少年が健全な将来を築いていくため、少年を取り巻く環境を調整し、家族と学校、職場などと適切な協力関係を築いていく活動のことを指します。
少年事件は、親族、学校、友人関係、地域の生活などと密接に関係して発生します。良くも悪くも、少年は周囲の影響を受けながら成長していくものです。言い換えれば、環境さえ整えれば、補導されるような状況から脱して、その後も、健全に成長していける可能性が十分にあるのです。
環境調整をうまく行うには、本人の努力だけでなく、周囲が積極的に関わっていくことで、少年の未来を支えるという視点が大事です。弁護士は、少年事件の特性に配慮しながら、事件の実態に合った環境調整の方法について説明することができます。 -
(4)被害者と示談する
補導された事件で何らかの被害が発生している場合は、その被害について対応する必要があります。被害への対応とは、具体的に次のような方法を指します。
① 被害者に連絡して謝罪する
被害対応でもっとも重要なことは、被害者に謝罪の意を伝えることです。謝罪が遅れたために、話がこじれてしまうというケースはよくあるものです。
とはいえ、子どもが直接謝罪するだけでは相手が納得しない場合もあります。親が出ていくとしても、いつどのように謝罪すればいいのか、判断に迷うでしょう。謝罪の方法を誤ると、かえって被害感情が高ぶって、問題が大きくなってしまうリスクもあります。
示談交渉の段階でトラブルになってしまうこともあるため、警察は、加害者に被害者の連絡先を直接教えるのを拒み、弁護士に依頼するよう誘導する傾向があります。
被害者への対応を弁護士に依頼すれば、弁護士は適切に冷静に対応するため、謝罪もスムーズに進む可能性が高まります。
また、被害者の中には、加害者に対して自分の連絡先を伝えることを拒む方もいます。加害者に自分の情報を知られたくないとか。加害者と直接連絡を取るのに抵抗がある、というのが主な理由です。
相手の連絡先がわからないと、謝罪することもできません。そんなとき弁護士が代理人として窓口になると、被害者が連絡先を開示してくれるケースもあります。
② 被害者に生じた損害を弁償する
被害者に損害が生じている場合は、速やかに賠償するべきです。損害の内容としては、財産的な損害の場合もありますし、怪我などの身体的損害の可能性もあります。いずれにしても、日本における損害弁償の方法は、金銭を支払うのが原則です。
経済的な損害であれば、その金額を被害者に支払って弁償します。身体的な損害であれば、治療費などの実費に加えて、慰謝料も発生します。
この場合、何に対して、いくら払えばいいのかは難しい判断です。
弁護士であれば適切な金額を検討・提示して、速やかに被害弁償を進めることができます。
なお、被害を弁償した場合は、それを証明する書面を作っておくことが重要です。警察や裁判所などに提出する証拠とするためです。弁護士ならば、被害弁償を証明するための書面を正確に作成することが可能です。
③ 被害者と示談する
刑事事件で重視されるのは、加害者と被害者との間に示談が成立したかどうかという点です。示談とは、被害者と加害者が協議して、お互いに、その事件に関する紛争を終わらせるという合意のことです。
示談が成立すると、被害者は、加害者に賠償請求をしたり、事件に関する新たな不満や文句を言ったりすることができなくなります。
警察や裁判所からすれば、被害者が納得して、事件に関する紛争を終わらせてもよいという意思を示したという示談の事実は、重要な意味を持ちます。つまり、示談が成立すれば、刑事処分においては、加害者側に大きく有利な事情となるのです。
被害者と示談をするには、冷静な判断力と交渉力が必要です。また、示談の成立を証明する書面もとても重要です。弁護士ならば、被害者との間で示談交渉を進めて示談成立を目指すことができます。
④ 被害者から、宥恕(ゆうじょ)をもらう
「宥恕(ゆうじょ)」とは、被害者が加害者に対して厳しい処罰を求めません、どうか寛大な処分をしてあげてください、という意思表示のことです。いわば、被害を受けた本人が加害者を許す行為とも言えます。
宥恕の意思表示は、書面で作成してもらうことが一般的です。示談書面の中に、宥恕文言を盛り込んで作成することも可能です。弁護士であれば、被害弁償や示談に加えて、宥恕を求める交渉も進めることができます。
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5、補導についてご家族ができること
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(1)子どもの話を聞く
子どもが補導されたとき、家族は大きく動揺し、対応に悩むでしょう。しかし、もっとも動揺して不安にかられているのは、子ども本人です。たとえ、ふてくされた表情を見せていたとしても、子どもは常に家族からの助けを待っているものなのです。
ご家族としては、一方的に子どもを責めたり、問い詰めたりしないようにしましょう。じっくり話を聞くことで、子どもの本当の気持ちや、背景事情が見えてきます。何があっても家族は子どもを支える存在であることを伝えて、一緒に考える姿勢で子どもと向き合うことが大事です。 -
(2)事件の背景事情を知る
子どもが補導される場合、その背景に子どもの複雑な人間関係が隠れている場合があります。学校や部活動など、子どもには子ども独自の閉鎖された社会があります。時には、子ども自身がその中で苦しんでいるときもあります。
適切な居場所が見つけられないとき、子どもは問題行動を起こしてSOSを発信している可能性もあります。ご家族としては、補導されたことを、子どもを知るためのひとつのきっかけととらえて、事件の背景にある子どもの事情に寄り添っていきましょう。 -
(3)教師に相談する
子どもの生活の基盤は、家庭と学校です。家庭生活と学校生活のどちらかの基盤が崩れると、子どもの心や言動に影響が出てきます。
しかし、学校でどんな生活を送っているのか、親は直接知ることができません。時には、親が全く知らないことが学校で起きている可能性もあります。
子どもが補導された場合、大切なことは、今後どうやって子どもの健全な生活を取り戻すかを考えることです。子どもが健全な生活を立て直すためには、家庭と学校という2つの基盤を、どちらも安定させることが重要です。そのため、親と学校との連携は不可欠なのです。
学校に補導の事実を隠している場合は別ですが、明らかになっているならば、率直に教師に相談し、子どもを支えていくためにできることを話し合ってみてください。 -
(4)被害者に謝罪する
子どもが問題を起こして他人に被害を与えた場合、親が知らん顔をしているわけにはいかないでしょう。とはいえ、被害者にどうやって謝罪したらよいのか、どんなふうに話を進めたらいいのか、正解を見つけることは難しいものです。下手をすれば、事態が悪化してしまうおそれもあります。しかし、迷っている間に謝罪が遅れると被害者が完全に怒ってしまい、示談ができなくなる可能性もあります。
補導された事件について、被害者がいる場合は、早めに弁護士に相談して、被害者対応を検討することをおすすめします。
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6、まとめ
本コラムでは補導と逮捕の違いや、ご家族や弁護士ができることについて解説しました。子どもが補導されたという連絡を受けて動揺しない親はいません。子どもの将来や自分たちの生活を不安に感じることもあるでしょう。
しかし、不安で動揺しているばかりでは事態が進みません。子どもを支えつつ、事態を良い方向へ進めていくためには、ご家族のスピーディーな対応が重要です。
大切なご家族が補導され、お困りのようでしたらベリーベスト法律事務所 沼津オフィスまでご相談ください。弁護士が親身になってお話を伺います。
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