自首をしたら親にバレる? 親に連絡が来る可能性と逮捕後の流れ
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令和3年5月、静岡市の女性が親族を名乗る男からの電話にだまされて、自宅を訪ねてきた男に現金を渡してしまう事件がありました。この事件で女性宅を訪ねたのは、別の県に住む高校生の少年です。少年は、事件ののちに、詐欺に加担したことを家族に相談して、警察署に自首しました。
この事例では、少年自身が家族に相談したうえで自首をしたという経緯があります。では、もし家族に相談せずに自首をしていた場合、事件のことが家族に発覚せずに済んだのでしょうか?
本コラムでは、罪を犯した場合の「自首」について、自首した場合に親や家族などにバレてしまうのか、自首にはどのような効果があるのか、自首するとその後はどうなるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。
1、自首をすると親にバレてしまう?
罪を犯して自首を決意したとき、気がかりになるのは「自首をしたあとはどうなるのか?」ということでしょう。
特に未成年や学生である方、親や家族と同居されている方であれば、「親や家族にバレてしまうのは避けたい…」といった不安を抱くかと思われます。
以下では、「自首」という制度の基本的な概要や、自首をすると犯罪の事実が親や家族に発覚するかどうかについて解説します。
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(1)「自首」とは?
「自首」とは、まだ警察などの捜査機関には発覚していない犯罪について、犯人が自ら捜査機関に対して罪を告白して、その処分を求める行為をいいます。
なお、すでに警察などが事件を認知しており、捜査が始まっている段階でも、犯人がどこの誰なのか特定されていない場合には「発覚前」という扱いになります。
もし、すでに被疑者(容疑者)として特定されている場合は「発覚後」なので、自首は成立しません。この状況で自ら警察などに出向いた場合には、「自首」ではなく「出頭」として扱われることになります。 -
(2)成人だと親や家族にバレずに済む可能性がある
自首を決意する理由としては、さまざまなものが考えられます。
典型的な例としては、罪の意識に苛(さいな)まれて耐えられなくなった、自首によって得られる法的な利益に期待した、というものがあります。
また、真犯人や別の犯罪の発覚を避けるために自首をする、といった反社会的な理由から自主を行う場合もあります。
そのため、捜査機関は、自首に対して慎重な姿勢で対応しています。
そして、「親や家族にバレる事態を避けたい」と考えて自首する方もおられるでしょう。
たしかに、自ら自首すれば親や家族などにバレる事態を回避できる可能性があります。時間がたってしまい、自宅に警察がやってくる事態になってしまえば、同居している親や家族にも事態が発覚してしまうのは避けられません。
一方で、自首すれば、バレずに済む可能性があるのです。
ただし、家族にバレずに済むのは、本人が成人であり、親や家族などと同居していなかった場合に限られます。たとえ自ら自首したとしても、警察により、身柄を拘束されてしまう場合があり、そうなった場合、親や家族が同居している場合だと、「家族が行方不明になった」といった届け出がなされるおそれがあります。そして、そうなった場合には、身体拘束されていることが親や家族にバレてしまうことは避けられないでしょう。
また、自首後に逮捕された場合は、テレビニュースや新聞などで実名が報道されてしまう可能性もあります。実名報道されてしまえば、たとえ別居していても親や家族の目にとまってバレてしまう可能性は高いでしょう。 -
(3)未成年の場合は親や保護者への発覚は避けられない
自首によって親や家族への発覚を防ぐことができる可能性があるのは、本人が成人の場合に限られます。
未成年の少年である場合には、少年の生活環境や性格などの調査が必要になるうえに、釈放時の身元引き受けや差し入れなどの必要から、家族に発覚することは避けられません。警察からの連絡がなかったとしても、家庭裁判所の少年審判への出頭や児童相談所からの連絡など、さまざまな経路によって、親や家族に発覚してしまうでしょう。
2、自首で期待できる効果
自首をすれば、自分が罪を犯した事実が警察などの捜査機関に伝わります。
自ら罪を告白するのは大変な勇気が必要とされる行為ですが、自首には、それに見合うだけの有利な効果が存在するのです。
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(1)刑の「減軽」が期待できる
刑法第42条1項は、自首をした者について「減軽することができる」と定めています。減軽とは、適用される犯罪に定められた法定刑を減じる処分で、刑罰の上限や下限が半減されます。
刑事裁判で言い渡される量刑は法定刑の範囲内であるため、減軽によって法定刑が減じられることで、結果として量刑も減じられる可能性があります。 -
(2)逮捕を避けられる可能性がある
自首には、捜査機関に自らの処分を委ねることで「逃げ隠れはしないし、証拠を隠したりもしない」という意思を表明する効果があります。
自首は犯罪が起きた後日におこなわれるものであるため、当然、現行犯逮捕はできません。
また、犯罪が起きた後に「逮捕の必要がある」と捜査機関が判断した場合には、裁判官に逮捕状の発付を請求することになります。しかし、法律上、逮捕をするためには「逃亡または証拠隠滅を図るおそれ」が存在することが要件となります。
自首をした人は、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがないと判断され、捜査機関が逮捕状の発付を請求したとしても、裁判官から逮捕状の請求を却下されて、逮捕を避けられる可能性があるのです。 -
(3)不起訴処分を得られる可能性が高まる
自らの罪から逃れようとせず、深く反省しているという姿勢は高く評価されます。
反省が認められて再犯に走るおそれはないと判断されたら、「刑事裁判を起こして罪を問う必要はない」として、検察官が不起訴処分を下す可能性が高まるでしょう。 -
(4)逮捕に備えた身辺整理の時間を確保できる
警察が逮捕に踏み切る際には、何の前触れもなく突然やってきます。
誰にも事情がわからないまま警察に身柄が拘束されて、こつ然と社会から姿を消すことになるため、勤務先や友人・知人なども混乱して、親や家族にも相談が入ることになるかもしれません。
自首を選択した場合には、自分のタイミングで警察に身を委ねることが可能です。
そうすると、身辺整理を進める時間も確保できるため、混乱を最小限に抑えられるでしょう。
3、自首するとどうなる?成人・少年の手続きの流れ
以下では、警察に自首をした後の手続きの流れについて、成人・少年の場合に分けて、それぞれ説明します。
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(1)成人の場合
自首を受けた警察は、どのような罪を犯したのかを詳しく聴取して、その内容を「自首調書」にまとめます。
その後の流れは、逮捕を伴う「身柄事件(強制事件)」になるか、それとも逮捕されないまま捜査が進む「在宅事件(任意事件)」になるかで若干の違いがあります。
身柄事件の場合には逮捕後に警察の段階で48時間以内、送致されて検察官の段階で24時間以内の身柄拘束を受けたうえで、さらに勾留による最長20日間の身柄拘束を受けることになります。
勾留が満期になる日までに検察官が起訴すると。刑事裁判の被告人としてさらに勾留されることになり、保釈等が認められない限り、刑事裁判が終わるまで釈放されません。
自首から始まる事件で起訴された場合は、「罪を犯した」という点に争いはないので、ほぼ確実に有罪判決が言い渡されるでしょう。
在宅事件の場合も、警察が捜査して検察官へと送致されて、検察官が起訴すれば刑事裁判になるという流れは同じです。ただし、身柄事件のような時間制限はないので、状況次第では捜査が長期化して決着までに時間がかかってしまう可能性があります。 -
(2)未成年の少年の場合
未成年の少年が自首した場合は、成人とは異なる手続きを受けます。
まず、未成年の少年は「少年法」に従って更生を目指した処分を受けます。
原則として、成人のように刑事裁判で刑罰を科せられることはありません。
自首後の捜査機関での扱いは成人と同じです。
逮捕の必要があれば身柄事件になり、逮捕の必要がないと判断されれば在宅事件として捜査を受けます。ただし、警察・検察官の捜査を終えると、すべての事件が家庭裁判所へと送致される、という点が大きな違いです。
家庭裁判所では、さらに成人の刑事裁判にあたる「少年審判」の必要性を判断するための調査が尽くされたのち、少年審判の結果によって少年の更生に適切な保護観察や少年院送致といった処分が下されます。
ただし、特定の重大犯罪の場合には、少年であっても、成人と同じ刑事手続きで処分を下すことが適切と考えられ、事件が家庭裁判所から検察官に戻され(これを「逆送」といいます。)、その後は、成人と同じように手続きが進むこととなります。
なお、令和4年4月の民法改正による成年年齢の引き下げを受けて、年齢によって少年の扱いが変わりました。
18歳未満の少年の扱いは従来どおりですが、18歳・19歳の少年は「特定少年」として扱われるようになったのです。
そして、「特定少年」の場合は、前述した「逆送」の範囲が広がっています。
4、自首に際して弁護士がサポートできること
罪を犯して自首を検討しているなら、実際に行動する前に、まずは弁護士に相談してください。
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(1)自首への同行が可能
自首を検討する際には、ただでさえ心細い状況であるうえに、「正しく自首として扱ってもらえるのだろうか?」「突然逮捕されないだろうか?」といった不安も尽きないでしょう。
弁護士が同行すれば、相談相手として心強い存在になるだけでなく、捜査機関をけん制して不当な扱いがないように対処できる、という効果も期待できます。 -
(2)自首後の継続した弁護活動を依頼できる
自首をして犯罪の事実が確認されると、本格的に捜査が始まります。
取り調べにおいてどういった供述をすればよいのか、不当な取り調べから身を守るにはどのような対策があるのかといった点についても不安を抱かれることでしょう。
自首の段階で弁護士に依頼しておけば、自首後の継続した弁護活動が可能です。
事件の初期段階から同じ弁護士が一貫してサポートに徹することで、不当な扱いを受けてしまうことを予防しやすくなります。 -
(3)上申書の作成をサポートできる
自首をする際には、どのような罪を犯して、なぜ自首に至ったのかを本人の口で説明しなければなりません。犯罪が成立する要件や刑事手続きについて詳しい知識をもっていないと、明瞭な説明をするのは難しいでしょう。
このような問題に対処するためには、あらかじめ「上申書」という文書に犯罪の事実や自首の経緯などを書き記しておき、自首の際に提出することが有効です。
自首の受理に関する取り調べは上申書の内容に沿って確認的に進むことになるため、難しい説明をするのに四苦八苦したり、言葉に詰まってしまったり、あるいは無用なことまで述べてしまったりする事態を回避できるでしょう。
事前に弁護士に相談すれば、上申書の作成をサポートすることが可能です。
弁護士の名義で法的な角度から十分な内容の上申書を作成することで、自首にせんだって弁護士が捜査機関に提出して自首の日時を打ち合わせる、といった対応も期待できます。 -
(4)親や家族などへの無用な連絡を防ぐことができる
どうしても事件のことを親や家族に知られたくない場合には、弁護士に相談してください。
捜査機関などに対して、通常は家族などに連絡が入る場面でも弁護士へ通知するようにはたらきかけることで、無用な連絡を防げる可能性があります。
事件の内容や本人の年齢によっては回避できない場面もありますが、親・家族への連絡に際して捜査機関側もある程度は慎重になることが期待できるのです。
5、まとめ
罪を犯したという事実を親や家族に知られない方法のひとつとして「自首」が挙げられます。自ら捜査機関に出向いて被疑者としての処分を委ねれば、親・家族の目前で逮捕されてしまったり、無用な連絡で驚かせてしまったりする事態を回避できる可能性があります。
ただし、親や家族などへの発覚を「確実に防ぐ」という方法は存在しません。
警察などの捜査機関や裁判所が親や家族への連絡もやむを得ないという判断を下すおそれがあるので、できる限り連絡を避けてほしいという意向を強く主張する必要があります。
自首による効果を最大限に発揮し、事件を親や家族に知られないまま解決したいと望むなら、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所にご連絡いただければ、刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、罪を犯してしまったご本人の不利益を避けるために全力でサポートします。
自首を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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