組織犯罪とは? 具体例と単独犯よりも罪が重くなる理由

2024年09月30日
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組織犯罪とは? 具体例と単独犯よりも罪が重くなる理由

静岡県が公表している統計情報によると、令和5年に静岡県内で認知された刑法犯総数は、15612件で、前年よりも1343件増加しています。

組織犯罪というと、暴力団による事件をイメージする方も多いと思いますが、実際には、暴走族、窃盗団、オレオレ詐欺などの特殊詐欺グループなど、さまざまな組織による犯罪が対象となります。

組織犯罪は、単独犯に適用される刑罰よりも重い刑罰が適用されますので、関わった場合には、重い罪に問われることを覚悟しなければなりません。

今回は、組織犯罪とは何か、容疑者になったら早期に弁護士に相談すべき理由などについて、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。


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1、組織犯罪とは

組織犯罪とはどのような犯罪なのでしょうか。以下では、組織犯罪の概要と組織犯罪に適用される組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)について説明します。

  1. (1)組織犯罪とは

    組織犯罪とは、組織的に行われる犯罪であり、以下のように幅広い罪が該当する可能性があります。

    • 封印等破棄罪
    • 強制執行妨害目的財産損壊等罪
    • 強制執行行為妨害等罪
    • 強制執行関係売却妨害罪
    • 常習賭博罪
    • 賭博場開帳等図利罪
    • 殺人罪
    • 逮捕監禁罪
    • 強要罪
    • 身代金目的略取等罪
    • 信用毀損、業務妨害罪
    • 威力業務妨害罪
    • 詐欺罪
    • 恐喝罪
    • 建造物等損壊罪


    組織犯罪は、組織として特定の犯罪を行い、かつ、捜査機関による検挙を免れるために多くのメンバーが役割を分担・連携して犯罪を繰り返すという特徴があります。また、末端のメンバーには代替性があるため、組織の首謀者や上位者を検挙しなければ、組織自体が維持され、犯罪が続けられるという特徴もあります。

    そのため、このような組織犯罪については、組織犯罪処罰法が適用され、単独犯よりも重い刑罰が科されることになります。

  2. (2)組織犯罪処罰法が適用される「団体」とは

    組織犯罪は、団体の活動として、(1)で記載したような一定の犯罪が実行された場合に適用される法律です。

    ここでいう「団体」とは、以下の要件をみたす組織体をいいます。

    • 共同の目的を有する多数人の継続的結合体
    • 目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるもの


    このような「団体」にあたるものとしては、以下のような組織が挙げられます。

    • 暴力団
    • 窃盗団
    • 特殊詐欺グループ
    • 外国人マフィア
    • 薬物密売組織
    • 悪徳商法組織


    特殊詐欺グループの「受け子」、「かけ子」、「出し子」などとして、特殊詐欺に関与していた場合、通常の詐欺罪ではなく組織犯罪処罰法が適用される可能性も否定できませんので注意が必要です

2、組織犯罪とみなされるとどうなるのか

組織犯罪とみなされた場合、単独犯とは異なりどのような措置を受けることになるのでしょうか。

  1. (1)在宅事件ではなく身柄事件として捜査が進められる

    犯罪の嫌疑をかけられた場合の捜査の進め方には、逮捕・勾留により身柄拘束をされた状態で捜査が進められる「身柄事件」と身柄拘束を受けることなく捜査が進められる「在宅事件」の2種類があります。

    組織犯罪の場合には、複数の共犯者がいるため口裏合わせをされるリスクや組織的に犯罪の証拠を隠滅されるリスクがあるため、身柄事件として捜査が進められる可能性が高いです。特殊詐欺事件でも、ほとんどのケースが身柄事件として進められています。

  2. (2)勾留延長になる可能性が高い

    逃亡のおそれまたは証拠隠滅のおそれがある場合には、警察によって逮捕される可能性があります。その後、引き続き身柄拘束をする必要がある場合には、勾留され10日間の身柄拘束をされる可能性もあります。

    組織犯罪の場合には、背後関係を含めた組織の全貌を明らかにする必要がありますので、捜査に時間を要し、10日間の勾留から、さらに10日間の勾留延長になる可能性が高いといえます。勾留延長が認められれば、逮捕から数えて最長23日間もの身柄拘束を受けることになります

  3. (3)接見禁止命令により面会が制限される

    逮捕中は、家族であっても被疑者と面会することはできませんが、その後、勾留に切り替わった段階で、面会が可能になります。しかし、裁判所が接見禁止命令を出した場合には、勾留中も面会が制限されてしまいます。

    組織犯罪では、共犯者による口裏合わせを防止するために、被疑者と事件関係者の接触を防ぐ目的で接見禁止命令が出される可能性が高いです。接見禁止命令が出されてしまうと、弁護士以外の第三者は、被疑者と面会することができなくなってしまいます。

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3、組織犯罪は単独犯よりも罪が重いのはなぜか

なぜ組織犯罪は、単独犯よりも重い刑罰が適用されるのでしょうか。以下では、組織犯罪が重く処罰される理由を説明し、単独犯と組織犯罪の具体的な刑罰を比較していきます。

組織犯罪処罰法は、暴力団による薬物・銃器犯罪の増加、オウム真理教のような大規模組織による凶悪犯罪が発生し、会社などの法人組織を利用した悪徳商法といった大規模な経済事犯の発生を受けて、1999年に制定された法律です。

組織犯罪は、犯罪収益が巨額で、その資金が事業活動への投資や犯罪への再投資に使われているという問題が指摘されていました。また、組織犯罪は、犯罪目的実現の確実性が高く、それにより引き起こされる結果も重大であることから平穏な市民生活が脅かされる事態にもなりかねません。

このような組織犯罪を予防するためには、一般的な刑罰よりも重い刑罰を科すことが必要であると考えられるため、以下の表のように単独犯よりも組織犯罪の方が重く処罰されているのです。

罪名 単独犯の場合 組織犯罪処罰法の場合
封印等破棄罪 3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金またはこれらの併科 35年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはこれらの併科
強制執行妨害目的財産損壊等罪
強制執行行為妨害等罪
強制執行関係売却妨害罪
常習賭博罪 3年以下の懲役 5年以下の懲役
賭博場開帳等図利罪 3月以上5年以下の懲役 3月以上7年以下の懲役
殺人罪 死刑または無期もしくは5年以上の懲役 死刑または無期もしくは6年以上の懲役
逮捕監禁罪 3月以上7年以下の懲役 3月以上10年以下の懲役
強要罪 3年以下の懲役 5年以下の懲役
身代金目的略取等罪 無期または3年以上の懲役 無期または5年以上の懲役
信用毀損、業務妨害罪 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 5年以下の懲役または50万円以下の罰金
威力業務妨害罪
詐欺罪 10年以下の懲役 1年以上の有期懲役
恐喝罪
建造物等損壊罪 5年以下の懲役 7年以下の懲役

4、組織犯罪の容疑者になったら弁護士を依頼すべき理由

組織犯罪の容疑者になってしまった場合には、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)接見禁止が付いていても面会が可能

    組織犯罪により逮捕・勾留されてしまうと、ほとんどのケースで接見禁止命令が出されますので、家族や友人等との面会は制限されてしまいます。

    しかし、接見禁止命令が出されたとしても、弁護士との面会は制限されることはありません。警察での取り調べでは、以下のような違法な取り調べがなされる可能性もあります。

    • 被疑者の弁解を聞かずに犯人と決めつける
    • 共犯者が否認しているにもかかわらず「共犯者が自白した」とうそを言って自白を迫る
    • 素直に認めれば軽い処分で済ませる等と告げる
    • 机をたたく、怒鳴る


    このような取り調べにより虚偽の自白をさせられ供述調書が作成されてしまうと、その後の裁判で供述調書の内容を覆すのは困難になります。そのため、早期に弁護士と面会して取り調べに対するアドバイスを受けることが大切です。

  2. (2)粘り強く示談交渉を行い有利な判決の獲得を目指す

    組織犯罪では、被害者が多数である、被害額が高額である等の理由で、一般的な犯罪に比べて示談が難航することが多いです。

    しかし、示談の成立の有無は、その後の処分の重さに大きな影響を与える事情になりますので、しっかりと対応していく必要があります。刑事事件の実績がある弁護士に依頼すれば、組織犯罪等の示談交渉が困難なケースであっても、粘り強く交渉を行うことで、示談成立を目指すことが可能です。被害者との示談は無理だと決めつけてしまう前に、まずは弁護士に相談してみましょう

5、まとめ

組織犯罪は、犯罪収益が巨額で、その資金が犯罪への再投資に使われていること、犯罪目的実現の確実性が高く、それにより引き起こされる結果も重大であることから、単独犯による犯罪よりも重い刑罰が適用されることになります。

また、身柄拘束が長期化し、その間の面会も制限される可能性も高いため、早期に弁護士に依頼をして、取り調べへのアドバイスや有利な処分の獲得に向けたサポートをしてもらうことが重要になります。

捜査機関から組織犯罪に関与した疑いをかけられてしまったという方は、お早めにベリーベスト法律事務所 沼津オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています