ブラック企業の辞め方|弁護士が教える引き止められた場合の対処法
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長時間労働が疑われるとして、令和4年度に静岡県内の労働基準監督署が監督指導を行った835個の事業場のうち、賃金不払い残業があったものは96個の事業場でした。
従業員(労働者)を不当な条件で酷使する会社は、「ブラック企業」と呼ばれることがあります。ブラック企業は、従業員を酷使するだけでなく、退職しようとする従業員をしつこく引き止めようとする傾向もあるようです。そのため、退職手続をスムーズに進められないこともあるでしょう。
本記事では、ブラック企業を辞めたい方に向け、引き止められた場合の対処法を、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。
出典:「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」(静岡労働局)


1、ブラック企業とは?
「ブラック企業」とは、先述のとおり、従業員を不当な条件で酷使する会社の俗称です。
ブラック企業の大きな特徴としては、労働基準法などの法令を遵守していない点が挙げられます。以下のような状況に心当たりがある場合は、勤め先がブラック企業と考えて差し支えないでしょう。
- 残業代が正しく支払われない
- 毎月、あまりにも長時間の残業をさせられている
- 休憩時間がほとんどもらえない、または休憩時間中も業務への対応をさせられる
- 頻繁に休日出勤をさせられている
- 有給休暇の取得を拒否される
- 上司からパワハラを受けている
2、ブラック企業でよく見られる従業員の引き止め方
ブラック企業は、退職しようとする従業員をしつこく引き止める傾向にあります。ブラック企業は職場としての魅力に乏しく、既存の従業員に辞められてしまうと、新たな人材を確保することが難しいからです。
そのため、会社からさまざまな形で圧力をかけられ、退職を思いとどまるよう迫られることもあるでしょう。たとえば、以下のような引き止め方を受けることがあります。
- 「後任者が見つかるまで退職を認めない」と主張される
- 「退職されたら業務に穴が開くので、損害賠償を支払え」と要求される
- 「退職しても離職票は渡さない」と言われる
- 「退職するなら、退職までの給料を払わない」と言われる
上記のような引き止めは、いずれも法的な観点から極めて不適切です。
無期雇用の従業員は、会社に対して2週間前に自身の退職について通知すれば、退職できます(民法第627条第1項)。退職理由が何であるかにかかわらず、会社は「退職を認めない」などと主張することはできません。退職によって会社に損害が生じても、従業員がその損害を賠償する必要がないのが原則です。また、会社が退職者に対して離職票を渡さないことや、給料を払わないことも違法です。
このような不当な引き止めに遭った場合は、直接会社に退職を通知する以外の対処法を検討しましょう。
3、ブラック企業に引き止められた場合の対処法
ブラック企業を退職しようとして、不適切な方法による引き止めを受けた場合の対処法を紹介します。自力で対処を続けるなら、内容証明郵便を送付しましょう。ひとりでは退職が難しい場合は、労働基準監督署への相談や弁護士への相談を検討してみてください。
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(1)配達証明付き内容証明郵便で退職届を送付する
退職を申し出ても、引き止めを受けて話が進まない場合は、内容証明郵便で退職届を送付しましょう。内容証明郵便は、郵便局が差出人・宛先・差出日・内容を証明するので、会社へ退職届を送付した事実を記録化することができます。また、配達日を証明するためには、オプションの配達証明を付けておきましょう。
配達証明付きの内容証明郵便を送付すれば、配達証明に示された到達日から2週間が経過した日に、会社を退職できることになります。 -
(2)退職代行サービスを利用する
自分で退職手続を進めるのが面倒な場合や、しつこい引き止めを受けて精神的につらい場合は、退職代行サービスを利用することも考えられます。
ただし、弁護士または弁護士法人以外の者が運営する退職代行サービスは、法律上、企業側とのトラブルの解決を取り扱うことができません。たとえば、未払い残業代の請求や労働審判・訴訟などの行為が禁止とされています。法律上認められた範囲を超えて業務を行う違法業者も存在するので、退職代行サービスを利用する際には十分ご注意ください。 -
(3)労働基準監督署に相談する
会社において、給料の未払いや違法な長時間残業などの労働基準法違反が生じている場合、従業員はその事実を労働基準監督署へ申告することができます(労働基準法第104条第1項)。
従業員の申告を受けた労働基準監督署は、事業場に対して立ち入り調査を行い、労働基準法違反を発見した場合は是正勧告を行います。是正勧告がなされた場合は、会社の劣悪な労働環境もある程度改善される可能性があるでしょう。
なお、労働基準監督署に申告をすることで、会社から異動や嫌がらせなどを受けないか気になる方もいるでしょう。しかし、労働基準監督署への申告を理由として、会社が従業員を不利益に取り扱うことは違法です(同条第2項)。 -
(4)弁護士に相談する
退職を考えるほど追い込まれている場合は、弁護士に退職の相談をすることをおすすめします。
次の項目で紹介するように、弁護士に退職代行を依頼すれば、ストレスを大幅に軽減しながら、迅速にブラック企業を退職することができます。
お問い合わせください。
4、ブラック企業を辞めたい|弁護士へ相談するメリット
ブラック企業に対して「辞めたい」と伝えても、あの手この手で引き止めようとしてくる可能性があります。しつこい引き止めに遭い、精神的に疲れてしまっている方もいらっしゃるでしょう。
ブラック企業を辞めたい方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
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(1)退職手続全般を代行してもらえる
弁護士に依頼すれば、ブラック企業から退職するための手続全般を代行してもらえます。退職の意思の伝達、残置物の引き取り、離職票の受け取りなど、面倒な手続をすべて弁護士に任せることが可能です。
会社への出社をやめて、退職手続全般を弁護士に任せることで、過重労働で崩れた生活の立て直しや、転職先を探すための活動に集中できるでしょう。 -
(2)ストレスが大幅に軽減される
ブラック企業に勤務している方は、出社するだけでも大きなストレスを感じていることと思います。そのうえ、退職をしつこく引き止められている状況では、ストレスも倍増してしまうでしょう。
弁護士に退職手続を依頼すると、会社と直接やり取りする必要がなくなり、精神的な負担を軽減できる可能性があります。 -
(3)未払い残業代を請求できる
ブラック企業では、従業員に対して適切に残業代を支払わないケースもよく見られます。しかし、先述のとおり、一般的な退職代行サービスでは、従業員に代わって会社に未払い残業代を請求することはできません。
これに対して弁護士は、退職手続の代行に加えて、従業員を代理しての未払い残業代請求も行うことが可能です。退職を機に、未払い残業代を回収したいと考えている方は、弁護士への依頼を検討しましょう。 -
(4)トラブルが発生しても安心
会社の引き止め行為がエスカレートすると、上司などから暴言を浴びせられたり、損害賠償を請求されたりすることがあるかもしれません。
弁護士は、このようなトラブルへの対応も可能です。会社とのやりとりはすべて弁護士が代行するので、本人が矢面に立つ必要はありません。交渉が決裂し、仮に労働審判や訴訟などの法的手続に発展しても、弁護士が手続から対応を行うこともできます。
ブラック企業を一刻も早く辞めたいと考えている方は、弁護士にご相談ください。
5、まとめ
ブラック企業がどんなにしつこく引き止めても、従業員は通知から2週間後に退職することができます。「後任者が見つかるまで退職は認めない」「退職したら損害賠償を請求する」といった、会社からの不当な言動に惑わされず、強い意志をもって退職手続を進めることが大切です。
ブラック企業が退職届を受け取ろうとしない場合は、配達証明付き内容証明郵便で退職届を送付しましょう。自分で退職手続を進めることにストレスを感じている場合や、未払い残業代を回収したい場合などには、弁護士の退職代行サービスの利用をご検討ください。
ベリーベスト法律事務所は、ブラック企業を辞めたくても辞められない方のために、退職サポートのご相談を随時受け付けております。弁護士名義での内容証明郵便の発送や、退職に関する企業側との交渉を行い、スムーズにブラック企業を退職できるようにサポートいたします。
ブラック企業での勤務に疲弊している方は、一刻も早く退職して新天地を見つけましょう。その際、なかなか退職できずに悩んでいる方は、ぜひお早めにベリーベスト法律事務所 沼津オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています