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固定残業代制(みなし残業代制)とみなし労働時間制は違う制度?

2022年07月12日
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固定残業代制(みなし残業代制)とみなし労働時間制は違う制度?

「長時間労働が疑われる」として、令和2年度に静岡労働局が監督指導を行った事業場は、758事業場に上ります。そのうち、違法な時間外労働があったのが313事業場、賃金不払い残業が確認されたのが51事業場、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが203事業場でした。

「みなし労働時間制」と「固定残業代制」は、言葉のニュアンスが似ていることから、しばしば混同されがちですが、実際には全く別の制度です。いずれも労働基準法に照らして間違った運用が行われることが多く、未払い残業代が発生しているケースもよく見られます。

本コラムでは、みなし労働時間制と固定残業代制の違いや、それぞれの制度について労働基準法に照らして確認すべきポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスの弁護士が解説します。

1、みなし労働時間制と固定残業代制の違い

みなし労働時間制と固定残業代制はどちらも労働時間と残業代に関する制度であるために、混同されがちではありますが、全く別の制度です。

  1. (1)みなし労働時間制|残業しても原則として賃金は増えない

    みなし労働時間制の大きな特徴は、「残業しても。原則として賃金が増えない」という点にあります

    労働基準法上、みなし労働時間制としては以下の3つが認められています。

    ① 事業場外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2)
    事業場(オフィスや店舗など)の外で働く労働者について、労働時間の算定が難しい場合に、原則として所定労働時間働いたものとみなされます。

    ② 専門業務型裁量労働制(同法第38条の3)
    高度の専門性が要求される19の職種のうち、業務の遂行方法を労働者の裁量に委ねるべきものにつき、労使協定に基づいて導入が認められます。
    実際の労働時間にかかわらず、労使協定で定められた時間数働いたものとみなされます。

    ③ 企画業務型裁量労働制(同法第38条の4)
    企画・立案・調査・分析の業務を取り扱う職種につき、労使委員会決議に基づいて導入が認められます。
    実際の労働時間にかかわらず、労使委員会決議で定められた時間数働いたものとみなされます。


    3つのみなし労働時間制では、いずれも、実際の労働時間にかかわらず、所定労働時間またはあらかじめ定められた時間働いたものとみなされます。
    したがって、どんなにたくさん残業をしても、原則として賃金が増えることはないのです。

  2. (2)固定残業代制|一定時間以上残業すると、賃金が増える

    固定残業代制の場合、みなし労働時間制とは異なり、一定時間以上残業すると追加残業代が支給されて、賃金が増えます

    固定残業代制は、固定残業時間に対応する固定残業代(定額残業代)を、毎月必ず基本給などの所定賃金に上乗せして支給する制度です。

    残業が固定残業時間数に達するまでは、固定残業代によって残業代がカバーされているため、追加での残業代は発生しません。
    しかし、固定残業時間数を超過した場合は、超過分について残業代の支払いが発生するため、支給される賃金の総額が増えることになります。

2、みなし労働時間制と固定残業代制、残業代が追加で発生するケース

みなし労働時間制と固定残業代制については、「残業代は一定」というイメージを持たれがちです。
しかし、実際には、どちらの制度においても追加で残業代が発生するケースがあります。

  1. (1)みなし労働時間制の残業代が追加で発生するケース

    事業場外みなし労働時間制の場合、「所定労働時間働いたもの」とみなされるのは、事業場外で業務に従事して、労働時間を算定しにくい場合に限られます。

    これに対して、オフィスや店舗で内勤をしている時間など、労働時間の算定が容易な時間については、みなし労働時間とは別に労働時間としてカウントされます
    たとえば、みなし労働時間が適用される営業の外回りから帰ってきた後、オフィスで2時間デスクワークをした場合には、2時間分の残業代が追加で発生します。

    また、3つのみなし労働時間制のすべてについて、残業代が追加で発生するのは、深夜労働(午後10時から午前5時の労働)が発生した場合です。

    深夜労働に対しては、通常の賃金に対して最低でも25%以上の割増賃金を支払う必要があるところ、深夜労働の割増賃金はみなし労働時間制にも適用されます。
    通常の賃金相当額については、みなし労働時間制により支払い済みの取り扱いとなります。一方で、割増分相当額については、追加残業代の支払いが必要です。

  2. (2)固定残業代制の残業代が追加で発生するケース

    固定残業代制の場合、あらかじめ定められた固定残業時間数を超過した場合に、追加残業代が発生します

    激務で労働時間が多くなりがちな状況にある場合には、固定残業代制が採用されているとしても、未払い残業代があることを疑いましょう。

3、正しく運用されている? みなし労働時間制と固定残業代制のチェックポイント

みなし労働時間制と固定残業代制では、会社が労働基準法のルールを誤解している、または意図的に無視しているという原因から、正しく運用されていないケースが非常に多いです。
以下では、労働者の方に向けて、みなし労働時間制と固定残業代制に関する違法な運用がなされていないかをチェックするためのポイントを紹介します。

  1. (1)みなし労働時間制のチェックポイント

    みなし労働時間制については、主に以下の4点について、違法な運用がなされているケースが多いです。いずれも、会社が残業代を抑制するために、制度を濫用しているケースです

    ① 会社が業務のやり方や時間配分などを具体的に指示していないか(裁量労働制の場合)
    専門業務型裁量労働制および企画業務型裁量労働制を適用できるのは、業務の遂行方法や時間配分などを、大幅に労働者の裁量に委ねる場合のみです。
    各裁量労働制を適用しながら、会社が業務のやり方や時間配分などを具体的に指示することは矛盾することとなり、違法です。
    この場合、労働基準法の原則どおり残業代が発生します。

    ② 定型的な業務であるにもかかわらず、裁量労働制が適用されていないか
    専門業務型裁量労働制は、高度な専門性を要求される19の業務についてのみ適用できます。
    企画業務型裁量労働制は、企画・立案・調査・分析に関して高度な裁量を要求される業務についてのみ適用できます。
    これらに該当しない業務、たとえば定型的な業務に従事している労働者に対して裁量労働制を適用することは違法です。
    この場合も、労働基準法の原則どおり残業代が発生します。

    ③ 内勤の時間について残業代が支払われているか(事業場外みなし労働時間制の場合)
    事業場外みなし労働時間制を適用する場合でも、内勤の時間については、労働基準法の原則に従って残業代を支払う必要があります。
    内勤の時間帯について全く残業代が支払われていない場合、未払い残業代が発生している可能性があります。

    ④ 深夜労働について割増賃金が支払われているか
    すべてのみなし労働時間制に共通して、深夜労働に対しては25%以上の割増賃金が発生します。仮に、適法にみなし労働時間制を導入しているとしても、深夜労働については割増賃金が発生するのです。
    深夜労働を行っているにもかかわらず、割増賃金が支払われていない場合には、未払い残業代が発生している可能性があります。


  2. (2)固定残業代制のチェックポイント

    固定残業代制については、労働基準法に関わる、以下の4点をチェックしましょう

    ① 基本給と固定残業代が区別して明示されているか
    固定残業代制を導入する際には、使用者は基本給と固定残業代を区別して、労働者に対して内訳を明示する必要があります。
    固定残業代の金額が一見して分からない状態になっている場合、固定残業代制は違法・無効であり、労働基準法の原則どおり残業代が発生します。

    ② 合理的な固定残業時間が明示されているか
    固定残業代制を導入する場合、固定残業代に対応する合理的な固定残業時間の明示も必要です。
    以下の場合などには、固定残業代制の全部または一部が違法・無効となる可能性があります。
    • 固定残業時間が明示されていない場合
    • 固定残業時間が無制限とされている場合
    • 三六協定の上限である月45時間を大幅に超える固定残業時間数が設定されている場合

    ③ 固定残業時間を超過した残業に対して、残業代が追加で支払われているか
    仮に固定残業代制度が有効であるとしても、固定残業時間数を超過した残業が行われた場合、使用者は労働者に対して追加で残業代を支払う必要があります。
    追加の残業代が正しく支払われていない場合、未払い残業代として請求可能です。

    ④ 会社の説明の有無
    固定残業代制度を採用する場合、労働者に対して固定残業時間数や時間単価などの詳細を説明しなければなりません。


4、未払い残業代がある場合は弁護士にご相談を

企業による残業制度の不適切な運用等により、未払い残業代が発生している場合には、交渉・労働審判・訴訟などを通じて、会社に対して支払いを請求しましょう。

弁護士であれば、会社の出方を見ながら、適正額の未払い残業代を迅速に回収するためのサポートをすることができます。
「残業手当が未払いになっているのでないか」という疑いを抱かれた方は、お早めに、弁護士までご相談ください

5、まとめ

みなし労働時間制と固定残業代制は、名称の意味合いは似ているものの、互いに異なる制度です。
それぞれ労働基準法により、導入や運用に関する要件が設けられていますが、実際には企業による違反事例が後を絶ちません。

もし、みなし労働時間制や固定残業代制の不適切な運用により、残業代の未払いが発生している場合には、弁護士に相談することをおすすめします
弁護士であれば、交渉・労働審判・訴訟等を通じて、会社に適正額の未払い残業代を請求することが可能です。

沼津市や近隣市町村にお住まいで、長時間労働や残業代の支払いに関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 沼津オフィスにご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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